Webデザイナーは消えるのか。
長年Web業界に携わってきた立場から申しますと、このテーマは、もはや遠い未来ではなく、急速に現実味を帯びてきたと感じています。AIに質問すれば、瞬時にコードを書き出してくれる時代が到来しました。

Webデザインの未来
AIやノーコードツールの進化により、デザインの「パーツ作り」や「レイアウトを組む」という作業のハードルは劇的に下がりました。
これからは、大量生産できるバナー制作や、定型的なレイアウト、見た目を整えるだけのデザイン、数年前まで価値のあった基礎的なコーディングといった仕事は、今後ますますAIへ置き換わっていくでしょう。
Web制作会社の存在価値
わたしは、制作会社そのものがなくなるとは思っていません。しかし、「作ること」だけを提供する制作会社やフリーランスは、これから厳しい時代を迎えるでしょう。かつては、ホームページを持っていること自体に価値がありましたが、今では誰でも簡単にWebサイトを作れる時代です。
AIに指示し、数秒で吐き出されたものに、価値や対価、そして人に依頼する意味が問われます。これからは、「ホームページを作ります」というだけでは価格競争に巻き込まれやすくなり、企業としての差別化は難しくなっていくと考えています。
これから目指すべき方向
これからのWebデザインやWeb制作は、「消滅する」のではなく、AIにできる作業はAIに任せ、人間は人間にしかできない役割へとシフトしていくはずです。デザインを形にすることやコードを書くことの価値がなくなるのではなく、「なぜ必要なのか」「誰のために作るのか」を、人が人のために考える力の価値が、これまで以上に高まっていくと思います。
これから求められるのは、ソフトの使い方だけではなく、マーケティングをはじめとする「行動心理」そして「AIツールを使いこなす力」です。それらを組み合わせながら、ビジネスの課題そのものを解決できる人材が、これからのWebクリエイターに求められるのだと思います。
AIとともに課題を解決する設計
AIを使うと、美しいデザインは勿論、アニメーションやインタラクションを用いたリッチな演出効果も、瞬時に生成してしまいます。
では、「人は何を設計するのか?」
これからは、「人の心理を設計すること」がますます重視されていきます。
・「CVボタンを押す場所と心理は?」
・「なぜ、途中で離脱してしまうのか?」
・「何が、心配なのか?」
・「誰の何を解決するために、それがあるのか?」
こうした人の心理や行動は、企業ごとの事情や顧客の背景を理解しながら、設計する必要があります。つまり、これから価値が残るのは、単に画面を作る人ではなく、人を理解し、人の行動を設計し、AIと協力しながら課題解決に向き合い、本気で考えられる人。それがAI時代に求められるWebクリエイターだと考えます。大学や専門学校でも、これから業界で仕事をするためには、「考えられる人」が、最も重要であることを学生たちに伝えています。
AI時代のリスク。
Web制作は、本来「作るスキル」と「考えて作るスキル」は、全く別のところにあります。多くのスクールは、「作るスキル」は教えてくれても、考えて作るスキルは、教えてくれません。わかりやすく解説すると、カレーを作るレシピは、知っている。でも、
「美味しいカレーはどう作るのか?」
「出店して、お客さんを増やすには?」
「隣の店と同じ味では、勝負できない。」
作るレシピを知っているだけでは、成り立たない事柄は、たくさんあります。
AI時代になって、わたしが最も恐れているのは「考えない人」が増えてしまうことです。AIはすぐに「答え」を出します。それをそのまま受け入れ、納得してしまうと、人はその先を考えなくなります。悩まなくなります。AIが生成したものに満足し、一切の疑問も持たずに「これでいいんだ」と、思考が止まってしまうこと自体が、私たちが直面している最大の危機だと感じます。
AIは、多くの情報から、人を納得させる力があります。でも、そこから人を説得させたり、説明するのは、人の力が必要なのです。納得と説得は、役割が違います。AIと伴走しながら、自らも考え続け、思考を鍛えていく人だけが、次世代を担っていくと思うのです。

心理設計とは何か
多くの人は、Webデザインを配色や、レイアウト、写真やコーディングだと思っていますが、本質はそれだけではない。Webデザインとは、「人の心を設計する仕事」なのです。
Webサイトの向こう側にいるのは、紛れもなく「人や企業」。「迷っている」「不安を抱えている」「比較や検討をしている」様々な背景や状況があり、年齢や価値観なども違いますから「どのような相手に向けて設計するのか」を明確にする必要があります。(具体的な人物像を描く手法をペルソナと呼びます。)

「この人は、今、何に悩んでいるのか。」
「何を見れば安心できるのか。」
「どんなビジュアルや問いかけに心が動くのか。」
「どこにボタンがあれば行動したくなるのか。」
「行動を起こすために、必要な情報は何か。」
Webデザインとは、こうした問いに向き合い、一つひとつ組み立てていく仕事だと考えています。そのためには、普段から人やUIを観察することも欠かせません。
人の行動、感情の動き、ボタンの配置、操作性、読みやすさや理解、視覚。ストレスや不快感も含めた自身の心理や行動、身の回りにあるデザインも意識して、アーカイブしていきます。そして、その観察から得た気づきを、配色や余白、文章、写真、レイアウトという形に落とし込む。人としての経験や体験、観察がすべてが、仕事としてのアーカイブなのです。
AI時代に、生き残るWebデザインとは、画面をデザインするだけではなく、人の行動や心理を設計することが必要なのです。
AIは、これからもますます進化し、デザインやコーディングを高速で生み出していくでしょう。しかし、その先にいる「人」を理解し、その人が自然と行動したくなる流れを設計する仕事は、これからも人間に求められる役割だと考えています。
お読みいただきありがとうございました。
MITSUYO NAKATA.

