Webデザイナーを目指す理由。

SNSを見ていると、
「Webデザイナーになりたいです」
「未経験ですが、需要はありますか?」
「今からでもWebデザイナーになれますか?」
そんな投稿をよく見かけます。もちろん、Webデザイナーを目指すこと自体に、何の問題もありません。ただ、長くこの業界に携わってきたからこそ、見かけるたびに気になることがあります。
「なぜ、Webデザイナーになりたいんだろう?」
・デザインが好きだから?
・ものをつくることが好きだから?
・Webの世界に興味があるから?
・収入につながりやすそうだから?
・在宅で働けそうだから?
その「目指したいと思った理由」もしくは「きっかけ」を、お聞かせください。
在宅で働きたいから。
たしかに、Webデザインには「在宅ワーク」と相性のいい条件がたくさんあります。なぜ「在宅で働きたい」という人たちの選択肢として、Webデザインがこれほど多く選ばれるようになったのでしょうか。
・パソコンがあれば仕事ができる。
・働く場所を選ばない。
・特別な資格がなくても始められる。
・未経験からでも学ぶことができる。
・個人でも仕事を受注できる。
そして何より、「デザイン」という仕事には、ものをつくる楽しさや、クリエイティブで華やかなイメージがあります。さらに、コロナ禍をきっかけに在宅勤務が広がり、副業やフリーランス、リスキリングといった働き方や学び方も身近になりました。
・在宅で働きたい。
・自由な働き方がしたい。
・子育てと両立したい。
数年前から、「在宅で働きたい」という希望が、いつの間にか「Webデザイナーになろう」に結びつくようになりました。でも、在宅でできる仕事は、Webデザイン以外にもたくさんあります。事務、経理、ライティング、SNS運用、動画編集、エンジニア。そもそも「在宅」は職業ではなく、ただの働く場所に過ぎません。「在宅ワーク」を視野に入れた就活をする前に、順番を整理してみましょう。
① 在宅で働きたい
子どもがいる・通院・介護・通勤が難しいなど。
↓
② どんな働き方がある?
会社員・業務委託・フリーランスなど。
↓
③ どんな仕事がある?
事務・経理・ライティング・SNS運用・動画編集など。
↓
④ 自分に合いそうな仕事は?
得意なこと・好きなこと・経験・性格・環境など。
↓
⑤ その仕事をするために、何が必要?
学校やスクール・独学・資格取得・実務経験など。
こうして順番に考えていった先に、「Webデザイン」という選択肢があってもいいと思うのです。ところが、実際は
在宅で働きたい → Webデザイナーになろう → スクールを探す
と、思い込んだままスクールを受ける人は少なくありません。本来は、「なぜ在宅なのか」「どんな働き方があるのか」「自分には何が合うのか」と、考えることがいくつもあります。もしかすると迷走してしまう原因は、答えが見つからないことではなく、選ぶ前に考えるべきことを飛ばしたまま、先へ進んでしまっていることなのかもしれません。
理想と現実。

SNSで見かけるWebデザイナーの多くは、「仕事」そのものよりも「生活」を見せています。
おしゃれな部屋で、膝に赤ちゃんを乗せたままノートPCを広げる。好きなカフェで仕事をする。子どもとの時間を大切にしながら、自分の好きな時間に働けるママデザイナー。そんな発信を見ていると、Webデザインは「誰でも、簡単に自宅で稼げます。」とうたうスクール等の広告が、蔓延しているように感じます。そこに映っているのは、Webデザイナーという「仕事の実態」よりも、「理想の働き方」なのかもしれません。
実際は、画面には映らない現実もたくさんあります。
・厳しい納期。
・度重なる修正依頼。
・急なクライアント対応。
時代の流行や、次々とアップデートされる技術を学び続ける必要もあります。フリーランスは、営業や請求、契約、スケジュール管理なども自分の仕事です。ヒアリングやコミュニケーション力が必要な場面も多々あります。パソコンに向かってデザインをしている時間だけが、Webデザイナーの仕事ではありません。
「知らない仕事」は選べない。
就職活動の面接や、スクールに入る前の相談などで、よく聞かれる質問があります。
「あなたは何がしたいですか?」
仕事内容そのものを知らない状態で、「何がしたいの?」と聞かれても、答えるのは難しいと思います。これは能力の問題ではありません。知らないものの中から、やりたいものを選ぶことはできないからです。まずは、どんな働き方や仕事があるのかを知ること。選択肢を知ることで、初めて「自分はどうしたいのか」を考えられるようになります。
なぜ?その理由を考える。
もし今、「在宅で働きたいから、Webデザイナーになる!」と思っているなら、一旦外して考えてみましょう。
・なぜ在宅で働きたいのか。
・どんな生活をしたいのか。
・どんな働き方が合うのか。
・何が好きで、何が苦手なのか。
ここで改めて、もう一度お聞きします。
なぜ、Webデザイナーになりたいと思ったのですか?
その「理由」や「きっかけ」を、お聞かせください。
働き方の選択肢。
Webデザインは、奥深く魅力ある仕事です。考えたものが形になり、それが誰かに届き、誰かの役に立つ。私自身、長くこの仕事に携わってきましたが、今でもそう思います。でも、「在宅でできそうだから」という理由だけで、Webデザイナーを目指す必要はないと思います。
「未経験から、好きな場所で自由に働くWebデザイナーへ」というキャッチに惹かれ、高いスクール代を支払ったあとに「思っていたのと違った」と後悔している人も見受けられます。
「在宅ワーク」も今ではひとつの働き方として定着しています。ただ、在宅で働くことと、Webデザイナーになることは同じではありません。Webデザイン以外にもたくさんの選択肢があります。
会社員として在宅で働く方法もありますし、自分の得意なことを活かせる仕事が、ほかにあるかもしれません。調べているうちに、今まで知らなかった仕事に出会い、興味を持つかもしれません。
本当に大事なのは、「何になるか」ではなく、「どう働きたいか」を先に考えること。仕事は、人生のすべてではありません。でも、どんな仕事を選び、どんなふうに働くかは、少なからず、その人の生き方や価値観をつくっていくものだと思います。だからこそ、「理想の働き方」ではなく、自分にとっての「心地よい働き方」を探してほしいと思います。

在宅なのか、会社なのか。
Webデザイナーなのか、まったく別の仕事なのか。
答えは、人それぞれでいい。
仕事を選ぶことは、これからの自分の時間を、どう使うかを選ぶことでもあります。そんなところから、考えてみてもいいのではないでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。
MITSUYO NAKATA.

