去る者は追えず。

気づけば、私がWeb制作を始めた頃からもう20年以上。今では新しいフレームワークやライブラリが次々登場しますが、昔の現場はまさに「魔法と混沌」の世界でした。今日は、個人的に「懐かしい…!」と思うツールや技術を、思い出とともに振り返ってみます。
Shockwave Flash

かつてWebといえば、Flashなしには語れません。ページを開けば、アニメーションが動き、背景でBGMが流れ、マウスを動かすだけで反応する…そんな時代でした。当時のインターネット速度に適さず、動作が重いためにブラウザが頻繁に落ちてしまうことも少なくありませんでした。
トップページに入る前に、Flashによるイントロページを配置。Flashを見てから、indexへ移動するという幕開け演出が、流行りました。アクセスするといきなりサウンドが鳴ったりするので、ボリューム調整のサウンドコントローラーを作ったり、人が歩くアニメーションを再現するため、身体の動きを研究したこともありました。
Flashは、もともと「マクロメディア」という会社の配下だったんですよね。2005年、アドビシステムズは約34億ドルでマクロメディアを買収し、両社が合併。Flashはこの合併により、Adobeシリーズの一部となりました。Web業界に入ったばかりの私にとって、マクロメディアは、かっこよくクールで憧れでした。イベントやセミナーに参加して、ノベルティやステッカーを集めていたのを覚えています。

Flashはセキュリティ問題やモバイル非対応で最終的に終了しましたが、あの頃の「躍動するWeb」の衝撃は今でも忘れられません。Flashによるゲームやバナーも至る所にありました。Adobe Flash Player のサポートは、2020年12月31日をもって終了。ひとつの時代の終わりを感じました。
FrontPage

次に忘れられないのは、FrontPage。ボタン一つでページが作れる魔法のようなツールでした。でも生成されるHTMLはとんでもないカオス。全ては、tableセルの中に入れて構成され、余計なspanやfontタグが入り乱れ、IE以外のブラウザでは崩れることもしょっちゅうでした。

Adobe GoLive
FrontPage以外にも、Adobe社がかつて販売していたWebオーサリングツール「Adobe GoLive」(CS3 Design Premium→Deamweaver)も懐かしいものです。当時のマシン能力と容量に耐えきれなかった。とにかく重い!重すぎるツール。
FrontPageに委ねてページを作って、ソースを見たら、不要な意味不明タグが100個以上連打で入ってるんですよね。消しても消しても再び復活。外部CSSを無視して自動でインラインスタイルがバンバン入ってるし、IEでしかまともに表示されず、他のブラウザは完全無視で強硬なツールでした。
当時は、「ようこそ!あなたは⚪︎⚪︎番目の客様です」などと書かれたアクセスカウンターや掲示板が流行りました。「ウェブサイト」ではなく「ホームページ」の呼称が強く、たまに「ホムペ」とか略された呼称が笑えます。ホムペってなんだい?(笑)
Fireworks

そしてデザイン面で欠かせなかった、Fireworks。Web用に特化していて、ボタン、バナー、スライス…デザインと実装が直結する便利さは本当に神でした。「スライスでウェブを作る手法」は斬新でしたが、サイズやカラーを修正するたびにスライスのやり直しが発生。ボタンの角丸作るだけで、めちゃ大変でした。企業のコーポレートサイトで光沢ボタンや反射バナーも流行りましたし、Flashと組み合わせて「ボタンを押すとアニメが動くUI」なども実現していました。
Fireworksは、非常に使いやすく人気でしたが、2012年に突然の開発終了。あれから、もう10年以上経つんですね。近年は、Web制作も「多様化」の時代。コーディングもデザインも、多くの選択肢があって、クリエイターさんによって使うツールは様々なのではないでしょうか。
始まりがあれば、終わりがある。
長年の経験から感じることですが、無償・有償を問わず、ツールやサービスというものは「突然始まり、容赦なく終わってしまう」ということ。利用率が低下したり、競合に敗れたり、採算が合わなくなれば、予告とともに「終了」や「閉店」が告げられる。企業の合併・買収(M&A)によって突然姿を変える場合もある。誰にも引き留められない。
今でもSNSをはじめ、さまざまなツールを利用していますが、心のどこかで「いつ終わるかわからん」という危機感を抱えています。Webサイトもまた、数年後にはリニューアルで上書きされ、淘汰されていくもの。結局、こうしたことが世の常なのでしょう。物事が絶えず進化していく中で、「時代を超えて支持される」って本当に稀であり、凄いことだと思うんですよね。
Web制作の歴史を振り返ると、すでに姿を消したツールや技術にも大きな価値がある。Flash、FrontPage、Fireworksといった存在があったからこそ、「Webで何ができるのか」という挑戦と可能性を追求し、現在の便利な環境へとつながってきたのだと思います。たとえそれが、将来消えていくものであっても、それらは次世代への開発の架け橋として、支持された意味がある。
昔のWeb制作を知る人も、知らない人も、あの時代の熱気や混沌を感じ取り、楽しんでいただけたら嬉しいです。


