世界最大のCMSの転換期 | 注目されるWordPress

AI時代、世界最大のCMSが迎える転換期。

2026年10月、PHPの重大な脆弱性が発表され、世界中のWeb担当者が対応に追われました。その報道を受けて、SNSでは「やっぱりWordPressは危ないんだな。」「もうWordPressは使わない方がいい。」といった声も見かけました。ここは、もう少し冷静に判断しましょう。

今回見つかったのはWordPress自体の欠陥ではなく、それを裏側で動かしているプログラミング言語「PHP」そのものの脆弱性でした。PHPはWordPressに限らず、世界中のあらゆるシステムやWebサービスで使われています。決して、「WordPressだから危険だった」というわけではありません。

もちろん、WordPressを使用しているWebサイトでも、脆弱性のあるPHP環境で動作していれば影響を受ける可能性があります。また、WordPressにはWordPress内のセキュリティ上の課題もあるので、テーマやプラグインの脆弱性、更新されていないシステム、不適切な設定など、実際に注意すべき点は少なくありません。

だからといって、「WordPressは危険だ」と結論づけてしまうのは、極端すぎると思います。今回のPHP脆弱性は、WordPressというアプリ自体の問題」と「それが動作するサーバー環境(PHP)の問題」であり、まったく別の観点です。

それにしても、「やっぱり危ない」と一気に極端な風評が広がる光景は、どうなのでしょう?その「やっぱり」という言葉は、何かの根拠によって生まれたものでしょうか。もしかすると、「なんとなく不安」という以前からの漠然としたイメージが、ニュースの表面的な情報によって、印象が強まったのかもしれません。


WordPressが普及した理由


WordPressが誕生したのは2003年。当初はブログを公開するためのソフトウェアでした。それまでは、Webサイトを更新するためには、HTMLを直接編集したり、制作会社へ依頼したりする必要がありました。そこへ登場したのが、ブラウザから文章や画像を投稿できるCMSです。専門的な知識がなくても、自分で情報を発信できることができた。これは当時、非常に大きな変化でした。

WordPressはその後、テーマやプラグインによって機能を拡張し、ブログだけでなく、企業サイト、店舗サイト、メディア、ECサイトなど、幅広い用途で利用されるようになりました。無料で利用できるオープンソースに加え、世界中に開発者や利用者が多く存在し、必要な機能を後から追加できる。そして何より、Webサイトの所有者が自分で情報を更新できること。当時、非常に斬新だった機能が、WordPressの普及を支えてきたのだと思います。

WordPressの登場は、Webサイトを作る人と、運営する人の関係を変えた存在でもありました。


WordPressの利用率の推移

Web技術の調査機関W3Techsによると、2026年10月時点で、世界のWebサイト全体の約40%がWordPressを使用しています。CMSを使用しているサイトに限れば、そのシェアは約59%。今なお、圧倒的な存在感を持っています。ここ数年の利用率の推移を見てみましょう。

WordPressは2003年の誕生以来、長期にわたって利用を拡大してきましたが、2022年春、初めて市場シェアの低下が注目されました。その後しばらく横ばいで推移したものの、2025年から2026年にかけて減少傾向が明確になってきました。

WordPressの市場シェア低下が初めて大きく注目されたのは、2022年春のこと。同年5月、SEOプラグイン「Yoast SEO」の創業者Joost de Valk氏が、WordPressのシェア減少について問題提起する記事を公開しました。そこで指摘されていたのは、WixやSquarespaceといった競合サービスの成長、WordPressのパフォーマンス改善の遅れ、そしてフルサイト編集機能の複雑さなどでした。興味深いのは、当時はまだ生成AIによるWeb制作が一般化する前だったということです。つまり、WordPressの成長に変化が見られた背景には、AIとは別の要因がすでに存在していたのです。 (※ Joost.blog)

大幅な減少ではありませんが、少しずつシェアを落としていることも事実です。その一方で、ShopifyやWixなどのサービスは利用を伸ばしています。つまり、WordPressは依然として最大のCMSでありながら、以前ほど一強ではなくなりつつあると言えます。

ただし現時点では、シェアの低下だけで「終わった」と判断するのは早計でしょう。市場が成熟すれば、選択肢が増えるのは自然なことです。むしろ、長年にわたって一つのCMSがこれほど大きな割合を占めてきたことの方が、特別だったのかもしれません。


WordPressのシェアが、減り始めた理由

長年にわたり利用を拡大してきたWordPressですが、近年、その市場シェアに変化が見られるようになりました。世界のCMS市場で圧倒的なシェアを維持していることに変わりはありませんが、2025年から2026年にかけて、少しずつ数字を落としています。なぜなのでしょうか。

長年、業界に携わってきた立場からの推測ですが、WordPress以外の選択肢が充実してきたことだと思います。以前は、ブログや企業サイトを構築するなら、WordPressが非常に有力な選択肢でしたが、いつの間にか、ECサイトに特化したサービス、デザイン性の高いサイトを構築できるノーコードツール、運用管理まで一体化したサービスなど、目的に応じた選択肢が増えてきました。WordPressでなければ実現できなかったことが、別の方法でも実現できるようになったわけです。

また、保守や管理の負担も無関係ではないでしょう。WordPressは自由度が高い一方で、更新やセキュリティ対策、動作確認など、継続的な管理が必要です。その負担を考えれば、多少の制約があっても、運用管理の手間をまるごと委ねられるクラウドサービスに任せられる仕組みを選ぶ人がいても不思議ではありません。

クラウドサービス(SaaS)
サーバーやプログラムの管理も不要。ログインするだけでWebサイトやショップを開設・運用できる。代表的なサービス例では、Studio、Wix、Squarespace、Shopify、BASE、STORESなど。


「WordPressはオワコン」の黒い噂。

「オワコン」とは、「終わったコンテンツ」の略で、かつて流行したもののブームが去り、時代遅れや不要になったとみなされる状態を指すネットスラングです。

新しい技術が登場すると、古い技術はすぐに不要になるかのように語られることがあります。新しいものが登場しても、従来の技術がすぐになくなるとは限りませんが、用途によって使い分けられたり、別の役割へと変化したりしながら、長く残ることもあります。

2026年10月のPHP脆弱性報道をめぐり、SNSや技術コミュニティではWordPressに対し「肯定派と否定派」に分かれた議論が巻き起こっていました。

否定派の意見肯定派の意見
• 利用率が高く、攻撃の標的になりやすい。
• 古いPHPやテーマ、プラグインなどが放置されやすい構造への批判。
• 継続的な保守費用や保守契約が負担になる。
• インフラ管理や更新対応が必要なCMSは、時代遅れになりつつある。
• セキュリティ対策や保守作業のストレスが大きい。
• 今回報道されたのはPHPの脆弱性であり、WordPress固有の問題ではない。
• WordPressの機能や自由度を総合的に代替できる手段は限られている。
• ブログや固定ページを自由に更新でき、機能の拡張性も高い。
• 圧倒的な数のプラグイン、豊富な情報、世界中の開発者による支援がある。
• 適切な管理体制があれば、長期的に安定した運用が可能である。

これだけ否定的な情報が広がると、事実と憶測が混同され、やがて「WordPressは危険だ」という印象だけが独り歩きしてしまうことが懸念されます。

本来は個別に検証すべき問題も、繰り返し語られるうちに、あたかも共通認識であるかのように定着してしまう。今回のPHP脆弱性報道についても、問題の本質を十分に理解しないまま、WordPressへの批判につなげる声が見られました。

事実と憶測が入り混じり、いつの間にか一つの「世論」のようなものが形成されていく。SNS時代ならではの危うさを感じます。実に、怖い現象ですね。


WordPressの動き。

AIを取り込み、進化を模索するCMSの現在地

WordPressは2025年にAIチームを発足させ、AI技術をWordPressの仕組みに取り入れるための開発を進めています。2026年の開発方針にも、AIを活用した制作や運用、外部ツールとの連携などが掲げられています。例えば、AIがWordPressの機能を理解し、投稿やメディアなどの操作を支援する仕組みの整備も進められています。これまで人が管理画面を開いて操作していた作業を、将来的にはAIエージェントが支援する。そんな方向性も見えてきました。

WordPressはAIによって置き換えられるだけの存在ではなく、AIを取り込みながら、自らも変化しようとしています。でも、その変化がどこまで利用者に受け入れられるかは、これからの話ですね。新しい機能が増えれば便利になる一方で、仕組みが複雑になる可能性もあります。WordPressが長年築いてきた強みを、AI時代にどのように活かしていくのか。今後の動向には注目したいところです。 


AI時代の多様化とWordPressのこれから

2003年の登場から20年以上。WordPressはWebの成長とともに歩み、制作の現場を支え続けてきました。その歴史の中で、Webを取り巻く環境や要求レベルは常に変化してきたのです。

今、AIという大きな波が訪れ、Web制作業界そのものが、歴史的な変革期の中にあります。新しい制作手法の登場も増えてきた中で、WordPress一強の時代から多様化の時代へと移り変わりつつあるように見えます。でも、わたしは、WordPressの役割がこれで終わるとは、到底思えないです。時代ごとに変化を乗り越えてきたからこそ、AI時代における新たな価値の創出を期待したいと思います。

ただ、これまでのように「Webサイトを作るなら、とりあえずWordPressだね」という時代は、変わり始めている気がします。それは、WordPressの終わりというより、Web制作の選択肢が広がっているということではないでしょうか。かつてWordPressが登場したとき、Webサイトの更新や情報発信のあり方が変わったように、再び今、AIによって、Webサイトを作ることの意味そのものが変わろうとしている気がします。


終わるのはWordPressなのか。
それとも、私たちが当たり前だと思っていたWeb制作の常識そのものが、変わるのか。

今はまだ、誰にも答えはわかりません。ただ一つ確かなのは、Web制作そのものが大きな転換期を迎えているということ。それは、ある日突然訪れるのではなくて、すでに静かに始まっている気がします。

気がつかないほど、静かに、ゆっくりと時代が動く。
そして、確実に。

お読みいただきありがとうございました。
MITSUYO NAKATA.